なぜ五つなのか
書店の分類は、文芸、実用、人文、コミック、児童、と分かれています。売り場としては合理的ですが、読む側の感覚とは半分しか一致しません。たとえば随筆は文芸と実用の両方に散らばり、評伝は人文にも文芸にも置かれます。
そこでこの手帖では、内容ではなく読む姿勢から分けました。腰を据えて物語に入るのか、事実を確かめに行くのか、考え方を仕入れるのか、断片を拾うのか、絵で読むのか。姿勢が決まれば本は選べます。逆に言えば、姿勢を決めないまま棚の前に立つから選べないのです。
書店の棚は出版社の都合で分かれています。読む側の都合で分け直すと、日本の本はだいたい五つに収まりました。物語、記録、考えかた、日常、絵。その総目次です。
書店の分類は、文芸、実用、人文、コミック、児童、と分かれています。売り場としては合理的ですが、読む側の感覚とは半分しか一致しません。たとえば随筆は文芸と実用の両方に散らばり、評伝は人文にも文芸にも置かれます。
そこでこの手帖では、内容ではなく読む姿勢から分けました。腰を据えて物語に入るのか、事実を確かめに行くのか、考え方を仕入れるのか、断片を拾うのか、絵で読むのか。姿勢が決まれば本は選べます。逆に言えば、姿勢を決めないまま棚の前に立つから選べないのです。
| 巻 | 棚 | 読む姿勢 | 一冊の目安 | 向いている時間帯 |
|---|---|---|---|---|
| 第一巻 | 小説 | 物語のなかに入る | 二百から四百ページ | まとまった時間がある日 |
| 第二巻 | ノンフィクション | 事実を確かめに行く | 三百ページ前後 | 集中力のある午前 |
| 第三巻 | 人文書と新書 | 考え方を仕入れる | 二百ページ前後 | 通勤の往復 |
| 第四巻 | 随筆と日記 | 断片を拾う | 一編五ページ | 疲れている夜 |
| 第五巻 | 漫画とライトノベル | 絵と速度で読む | 一巻二百ページ | いつでも |
五巻は独立しています。順に読む必要はなく、いま気になっている棚から開いてください。それぞれの巻には、その棚の歴史と、読む順番と、つまずきやすい点を入れてあります。
二葉亭四迷の言文一致から、漱石と鴎外、戦後の三島と安部、そして現在の芥川賞まで。日本の近代小説がどう変わってきたかを、読む順番の話として書きました。純文学と大衆文学の線引きについても、実際のところを扱っています。
評伝、ルポルタージュ、記録文学、紀行、調査報道。事実に取材した本には五つの型があり、型が分かると信用してよい本かどうかが見分けられます。小説より遠くまで連れて行ってくれる本の探し方。
哲学も歴史も社会科学も、入口はほとんど新書です。一九三八年の岩波新書が何を始めたのか、レーベルごとに性格がどう違うのか、そして概説から原典へ進むときの順番。挫折しないための最短経路。
『枕草子』『方丈記』『徒然草』から、寺田寅彦、向田邦子、須賀敦子、現代のエッセイまで。日本語がいちばん長く続けてきた形式です。何も起きない文章を面白く読むための、ごく実際的な手引き。
掲載誌が読者層を決め、読者層が絵柄と速度を決めてきました。その仕組みと、単行本、文庫版、完全版、愛蔵版の違い。どの版を買えば後悔しないか、そして電子と紙のどちらで読むべきか。
歌集、句集、詩集、写真集、図鑑、辞書。五つの分類から必ずこぼれる本があります。共通するのは、通読するものではなく、置いておいて何度も開くものだという点です。棚ではなく、机の上に置く本と考えるほうが正確です。
分類は道具であって、正解ではありません。実際には、二つの棚にまたがる本のほうが面白いことがよくあります。
迷ったときの順路を三つ書いておきます。どれも実際に机の上で試したものです。
五巻を通読する必要はありません。この手帖は最初から最後まで読むためではなく、棚の前で迷ったときに開くために作ってあります。
五巻は独立しているので、いま気になっている棚から読んで構いません。順路を決めたい場合は、物語が好きなら第一巻、知識を仕入れたいなら第三巻、読書そのものを再開したいなら第四巻から始めるのが確実です。第五巻は他のどの巻のあとに読んでも成立します。
書店の分類は取次と版元の都合でできていて、読む側の感覚とは半分しか合っていないからです。文芸と実用が分かれているのに、随筆はその両方に散らばります。この手帖は読む姿勢のほうから分け直しているので、売り場の地図ではなく、次に手を伸ばす先を決めるための道具として使えます。
作品の性質というより、掲載誌と賞の系統による区分です。芥川賞は新人の純文学、直木賞は中堅の大衆文学を対象にすると説明されますが、実際の作品を並べると境目はかなり曖昧です。読む側にとっては、どちらの棚に置かれているかより、その本の速度が自分に合うかどうかのほうが重要です。詳しくは第一巻で扱いました。
この机では含めています。判型があり、奥付があり、版と刷があり、古書として値がつく。物としての本の条件はすべて満たしています。読む速度と、絵が担う情報量が違うだけです。ただし同じ姿勢では読めないので、第五巻として別に立てました。