AkaneBooks 本を読むための机
用語集

本の言葉。単行本、文庫、新書、奥付、帯

毎日目にしているのに、名前を教わる機会がないものばかりです。判型の寸法、造本と綴じ、奥付の読み方。ここを押さえると、書店の平台が一気に情報になります。

用語集・二〇二六年八月更新・読み終えるまで約九分

机の上に文庫本、新書、四六判の単行本、A5判の本が大きさ順に並べられ、それぞれのカバーと帯が見えている
左から文庫判、新書判、四六判、A5判。値段の差は紙の量だけでは説明できません。判型は、その本が想定している読む姿勢の表明でもあります。

短い答え

判型は本の寸法、造本は綴じ方と表紙の作り、奥付は巻末の身分証明書です。この三つが分かれば、書店でも古書店でも、値札を見る前にその本の性格が読めます。

判型。本の大きさの名前

日本の本の寸法は、明治以降に定着した紙の規格から来ています。細かい誤差はありますが、店頭で見分けるには次の表で足ります。数字を覚える必要はなく、順番だけ頭に入れておけば十分です。

主な判型と、その寸法
呼び名 おおよその寸法 よく使われる本 読む姿勢
文庫判 横一〇五ミリ、縦一四八ミリ 文庫本。単行本の二年から三年後に出る 鞄と電車。片手で持てる
新書判 横一〇三ミリ、縦一八二ミリ 新書。書き下ろしの入門書 細長く、片手で開いたままにしやすい
B6判 横一二八ミリ、縦一八二ミリ 漫画の単行本、軽めの単行本 膝の上。長時間向き
四六判 横一二七ミリ、縦一八八ミリ 小説とノンフィクションの単行本 日本の単行本の標準
A5判 横一四八ミリ、縦二一〇ミリ 学術書、教科書、図版の多い本 机の上。開いて書き込む
菊判 横一五二ミリ、縦二一八ミリ 全集、辞典、重い研究書 置いて読む
B5判 横一八二ミリ、縦二五七ミリ 雑誌、大型の実用書、画集 両手。持ち歩かない

覚え方は単純です。文庫が最小、新書は幅が同じで背が高い、四六判が単行本の標準、A5判から先は机の上の本。同じ作品を二度買わないためには、この順番だけ分かっていれば足ります。

単行本、文庫、新書、選書、ムック

判型が寸法の話なのに対して、こちらは役割の話です。同じ内容の本が、時間差で違う器に入れ直されていきます。

  • 単行本。一冊ずつ独立して出される本。多くは四六判の上製か並製で、その作品が最初に世に出る形です。
  • 文庫。文庫判の叢書。単行本の売れ行きを見て、おおむね二年から三年後に出ます。安く、軽く、多くの場合は解説がつきます。岩波文庫が一九二七年に創刊して以来、日本の読書の背骨になってきた形式です。
  • 新書。新書判の叢書。文庫と違って、最初からその判型のために書き下ろされるのが本来の姿です。ひとつの主題を二百ページ前後で説明しきる器で、入門にいちばん向いています。
  • 選書。新書より少し大きく、単行本より軽い中間の叢書。専門と一般の間をねらった本が入ります。
  • ムック。雑誌と書籍の中間。雑誌のように特集で作られ、書籍のように棚に残ります。
  • 叢書、シリーズ。同じ体裁で続けて出される本の集まり。背表紙のデザインが揃うので、棚に並べたときに一目で分かります。

単行本を待つか文庫を待つかは好みの問題ですが、文庫化のときに加筆されたり、別の書き手の解説がついたりすることがあるので、急がない本は文庫まで待つほうが得な場合もあります。長く持つつもりの本の選び方は全集と愛蔵版の記事で扱いました。

本の各部の名前

ここから先は物としての本の話です。古書の状態表記を読むときに、そのまま必要になります。

  • カバー。いちばん外側の紙。書店で外して売られることはありません。日焼けするのはたいていここです。
  • 。カバーの下三分の一に巻かれた細い紙。宣伝文が刷られ、刷ごとに文言が変わります。消耗品なので、初版の帯は後から手に入りません。
  • そで。カバーの左右の折り返し。著者紹介や既刊一覧が入ります。
  • 表紙。カバーの下にある本体の表面。上製本では厚紙で作られます。
  • 見返し。表紙と本文をつなぐ紙。色紙が使われることが多く、造本の格が出る場所です。
  • 。本文の前にある書名だけの一枚。章ごとに置かれるものは中扉と呼びます。
  • 背、小口、天、地。背は棚に向く面、小口は開く側、天は上、地は下。古書の状態表記では天のヤケがいちばんよく書かれます。
  • のど。開いたときの中央、綴じに近い側。ここが狭い本は読みにくくなります。
  • 花布。上製本の背の天地に貼られた小さな布。装飾ですが、これがあると背の見え方が変わります。
  • スピン。本体に取りつけられた栞紐。上製本と一部の文庫にあります。
  • 。本体を収める箱。全集や愛蔵版に多く、日焼けと湿気から中身を守ります。
  • スリップ。本に挟まっている二つ折りの短冊。書店が補充発注と売上管理に使う伝票で、読者には不要です。
  • 奥付。巻末の記録欄。ここだけは、次の章で単独に扱います。

古書店で使われる言い方

「美本」はほぼ新品同様、「並」は普通の古書、「ヤケ」は日焼けによる変色、「シミ」「フォクシング」は茶色の点、「線引きあり」は書き込み、「帯欠」「函欠」はそれらが失われた状態です。値段の差はほとんどこの語彙で説明できます。

造本と綴じ方

本の寿命を決めるのは中身ではなく綴じ方です。同じ内容でも、綴じが違えば十年後の姿がまったく違います。

造本と綴じの違い
呼び名 つくり 開きやすさ 寿命
上製本 厚紙の表紙で本体をくるむ。いわゆるハードカバー 良い 長い。全集と愛蔵版はほぼこれ
並製本 表紙が本文と同じ厚さの紙。ソフトカバー 普通 中くらい。文庫と新書の標準
糸かがり綴じ 折った紙束を糸で縫い合わせる とても良い。平らに開く 長い。開き癖がついても崩れにくい
無線綴じ 背を接着剤で固める 普通。のどが読みにくい 接着剤が硬化すると背割れが起きる
中綴じ 二つ折りの紙を針金で留める 完全に開く 短い。薄い冊子と雑誌向き

紙にも寿命の差があります。かつて広く使われた酸性紙は時間とともに紙自身の酸で劣化して茶色くなり、脆くなります。日本の出版界では一九八〇年代から中性紙への切り替えが進み、いまの本の多くは中性紙です。古い文庫の茶色さは保管の失敗ではなく、紙そのものの性質であることが多いのです。

組み方と読む向き

日本語の本には縦組みと横組みがあり、それによって開く向きまで変わります。ここを間違えると、棚に並べたときに背文字の向きが揃いません。

  • 縦組み。行が上から下へ進み、ページは右から左へ。文芸書と新書の多くがこれです。本は右開きになります。
  • 横組み。行が左から右へ進み、ページも左から右へ。理工書、実用書、数式や欧文の多い本に使われ、左開きになります。
  • ルビ。漢字に添える読み仮名。すべての漢字につけるものを総ルビ、難しい語だけにつけるものをパラルビと呼びます。
  • 圏点、傍点。文字の脇に打つ点。強調のための日本語独自の方法で、欧文の斜体にあたります。
  • ノンブル。ページ番号。
  • 。各ページの端に小さく入る、書名や章題の見出し。厚い本ではこれがあると迷いません。

出版のまわりの言葉

本がどう作られて、どう店に届くのかを表す言葉です。買う側にも直接効いてきます。

  • 版元。その本を出している出版社のこと。
  • 取次。版元と書店の間に立つ卸売。日本出版販売とトーハンの二社が大きく、どの本がどの店に何冊置かれるかは、ここの配本で決まる部分があります。
  • 初版。最初の版。重版は刷り増しのこと。は同じ版で何回目に刷ったかを表します。詳しくは初版第一刷の見分け方にまとめました。
  • 再販売価格維持制度。書籍、雑誌、新聞などに認められた例外で、版元が決めた定価での販売が維持されます。だから新刊はどの書店で買っても同じ値段です。
  • 委託買切。委託は一定期間内なら書店が返品できる取引、買切は返品できない取引です。小さな独立系書店が買切で仕入れた棚は、店主の判断がそのまま出ます。
  • 絶版。版元が今後つくらないと決めた状態。品切れ重版未定は在庫が尽きて再刷の予定が立っていない状態で、こちらは戻ってくることがあります。
  • ISBN。国際標準図書番号。二〇〇七年から十三桁になり、九七八または九七九で始まります。続く一桁の四が日本語圏を表すので、日本の本の番号はほぼ九七八の四で始まります。
  • Cコード。カバー裏や奥付にある四桁の分類記号。一桁目が販売対象、二桁目が発行形態、残り二桁が内容です。たとえばC0093なら、一般向けの単行本で日本文学の小説という意味になります。
  • 定価本体価格。奥付やカバーに「本体一八〇〇円+税」とあるのが本体価格で、税を含んだ支払額が定価です。

これらの言葉が入ると、書店の棚も古書の目録も読めるようになります。実際にどこで買うかは本はどこで買うかに、棚そのものの分類はジャンル手帖にまとめてあります。

よくある質問

四六判とはどんな大きさですか

およそ横一二七ミリ、縦一八八ミリです。日本の単行本でもっとも多い判型で、書店の文芸書の棚に並んでいる本の大半がこれにあたります。文庫判が横一〇五ミリ縦一四八ミリなので、四六判は文庫より一回り大きく、A5判より一回り小さいと覚えておけば店頭では困りません。名前は明治期の紙の規格から来ています。

版と刷は何が違うのですか

版は組版そのもの、刷はその版で何回目に刷ったかです。誤りを直したり内容を加えたりして組み直せば第二版になり、まったく同じ内容を刷り増しただけなら第二刷になります。したがって初版第一刷とは、最初の組版で最初に刷られた分という意味です。引用や研究で版を指定する必要があるのは、版が変われば本文が変わるからです。

帯は捨ててよいものですか

読むだけなら邪魔なので捨てて構いません。ただし古書として手放す可能性が少しでもあるなら残してください。帯は刷ごとに文言が変わる消耗品で、初版に巻かれていた帯は後から手に入らないからです。帯の有無だけで値段が変わる本は珍しくありません。捨てないが挟んでおくのも嫌だという人は、本の最後のページに折って挟んでおくのが実際的です。

品切れと絶版はどう違うのですか

絶版は版元が今後つくらないと決めた状態、品切れ重版未定は在庫が尽きたが再刷の予定が立っていない状態です。読者から見た入手しにくさはほとんど変わりませんが、品切れ重版未定のほうは文庫化や復刊で戻ってくることがあります。どちらの場合も、古書の横断検索と図書館の蔵書検索を併用するのが早道です。

上製本と並製本、どちらを買うべきですか

一度読めば十分な本は並製で構いません。何度も開く本、書き込む本、十年後も同じ状態で持っていたい本は上製が向きます。判断が難しければ綴じを見てください。糸かがり綴じなら並製でも長持ちしますし、無線綴じの厚い本は上製でも背が割れます。

07

この語彙が効く三つの場面

言葉を覚えること自体が目的ではありません。覚えると、次の三つの場面で判断が速くなります。

  • 書店の平台で。同じ著者の本が二種類あるとき、片方が四六判の新刊、もう片方が文庫化された旧作だと一目で分かります。値段の差の理由が分かるので、迷う時間が消えます。
  • 古書の目録で。「函欠」「帯欠」「小口ヤケ」が読めれば、写真がなくても状態が推測できます。安すぎる出品には必ず理由が書いてあります。
  • 長く持ちたい本を選ぶとき。綴じと紙を見る癖がつくと、十年後に読み返せる本を選べるようになります。詳しくは全集、愛蔵版、箱入り本で扱いました。