まず、値段の話を片づける
日本の書籍と雑誌は再販売価格維持制度の対象です。版元が決めた定価での販売が守られる仕組みなので、新刊は大型書店でも駅前の小さな店でもネット書店でも同じ値段になります。値引き合戦がない代わりに、店は別のところで競うことになりました。
その別のところというのが、在庫と、届くまでの時間と、棚です。以下の表は、この三つで六つの買い方を並べたものです。値段の列がないのは、書き分ける必要がないからです。
新刊の値段はどこでも同じです。だから店を選ぶ基準は値段ではなく、在庫があるか、いつ届くか、その棚を誰がつくっているか。六つの買い方を、得意なことと苦手なことで並べました。
日本の書籍と雑誌は再販売価格維持制度の対象です。版元が決めた定価での販売が守られる仕組みなので、新刊は大型書店でも駅前の小さな店でもネット書店でも同じ値段になります。値引き合戦がない代わりに、店は別のところで競うことになりました。
その別のところというのが、在庫と、届くまでの時間と、棚です。以下の表は、この三つで六つの買い方を並べたものです。値段の列がないのは、書き分ける必要がないからです。
| 買い方 | いちばん強いところ | 届くまで | 正直に弱いところ |
|---|---|---|---|
| 大型の新刊書店 | その場で中身を確かめられる | 即日 | 棚が広すぎて選べない |
| 独立系の小さな書店 | 選書そのものが商品 | 即日、取り寄せは一週間前後 | 置いていない本のほうが多い |
| ネット書店 | 在庫の広さと検索 | 翌日から数日 | 偶然の出会いがない |
| 電子書店 | 置き場所が要らない、全文検索 | 即時 | 所有ではなく利用の許諾 |
| 古書店 | 絶版と品切れに強い、値段が動く | 数日から数週間 | 状態は現物次第 |
| 図書館 | 費用がかからない、失敗できる | その日から数週間 | 手元に残らない |
紀伊國屋書店、丸善ジュンク堂書店、三省堂書店といった大型店は、専門書の棚が生きているのが強みです。人文書や理工書を一段まるごと眺められる店は年々減っており、その体験自体が価値になりました。目当てがなくても行く価値があります。
くまざわ書店、有隣堂、旭屋書店、蔦屋書店など。話題書と文庫と実用書が中心で、専門書は薄い代わりに、通り道にあることがすべてを補います。読書が続くかどうかは、寄り道できる店が生活動線にあるかどうかでほぼ決まります。
店主が一冊ずつ選んだ棚を持つ小さな店。買切で仕入れている店も多く、返品できない覚悟のぶんだけ棚が濃くなります。同じ本が大型店にもあるのに、その店で買うと決めている読者がいるのはそのためです。
店頭にない本は取り寄せてもらえます。取次に在庫がなければ版元へ直接発注してくれる店もあり、ネット書店で入荷未定と出ている本が二週間ほどで届くことがあります。小さな版元の本ほど、この道が効きます。
夏の文庫フェア、受賞作の平台、書店員が自分でつくった選書台。とくに手書きのカードが立っている台は、その店で本を読んでいる人がいる証拠です。季節ごとの動きは新着と季節にまとめました。
どの本が何冊その店に並ぶかは、店の意思だけで決まりません。取次からの配本で決まる部分があり、小さな店ほど話題書が回ってきません。「置いていない」は「扱わない」ではないので、遠慮なく注文してください。
値段が同じである以上、比べるべきは在庫の深さ、到着日、そして店頭受け取りができるかどうかです。使い分けの基準はそれだけで足ります。
在庫のある本の到着の速さでは、この二つが抜けています。ただし出品者が版元でも書店でもない場合、定価より高い値がついていることがあるので、販売元の欄は毎回見てください。
いずれも書店や取次が母体のネット書店です。hontoは丸善ジュンク堂系で紙と電子をまたいで購入履歴を持てるのが便利、e-honとHonya Clubは近所の書店を受け取り場所に指定できます。送料をかけずに取り寄せる方法として実用的です。
学術書と洋書に強く、実店舗の在庫状況を店ごとに確認できます。専門書を探していて、都心に出る用事があるなら、在庫のある店を調べてから行くほうが早い場合があります。
置き場所の問題が消え、全文検索ができ、深夜でも買えます。その代わり、買っているのは物ではなく読む権利です。そこを納得したうえで使えば、紙との役割分担ははっきりします。
専用端末があり、目に優しい電子ペーパーで長時間読めます。文字ものにはこの二つがいちばん向きます。セールの頻度も高く、文庫より安くなることがあります。
KADOKAWA系の電子書店で、漫画とライトノベルの品ぞろえが厚く、コイン還元の率が高いのが特徴です。読み放題の枠もあり、シリーズ物を試すのに向きます。
紙で買った本と電子で買った本を同じ棚に並べて管理できます。同じ本を二度買う事故が減るので、蔵書が増えてきた人に向いています。
自治体の図書館が電子貸出を行っている場合があります。貸出期間が来れば自動で返却されるので、延滞も返しに行く手間もありません。まず自分の自治体の図書館サイトを確かめてください。
漫画と文字ものでは向いている画面が違います。文字は電子ペーパー、漫画は大きめのタブレット。この二つを混ぜると、どちらも中途半端になります。判型ごとの読みやすさは漫画とライトノベルの巻で扱いました。
絶版と品切れ重版未定に対して、いちばん確実な答えがここにあります。値段が需給で動く唯一の場所でもあるので、探す技術がそのまま費用に効きます。
東京都古書籍商業協同組合が運営する、全国の古書店の在庫を横断検索できる目録です。絶版本を探すときの最初の一手はここで、書名を入れれば全国の店の在庫と状態と値段が一覧になります。状態表記の読み方は本の言葉にあります。
東京の神田神保町には古書店が集まっており、店ごとに専門が分かれています。文学、思想、美術、洋書、映画。目当てがなくても歩く価値があり、秋には毎年、通りに露店が並ぶ古本まつりが開かれます。
状態のよい近年の文庫と新書が安く手に入ります。読書を始めたばかりで、失敗の費用を抑えたい時期にはここが向きます。古書店の店頭に出ている均一台も同じ役割で、一冊百円の台で読書の癖をつくった人は多いはずです。
初版であることが値段になるのは、需要が供給を上回っている一部の本だけです。多くの本は初版でも二刷でも値段は変わりません。帯や函が残っているか、署名があるか、そもそも版元が二度と作らないと決めた本かどうか。この三つのほうが効きます。詳しくは初版第一刷の見分け方で扱いました。
買うことと読むことは同じではありません。次の四つを知っていると、本にかける費用の性質が変わります。
新刊は安くなりません。日本の書籍は再販売価格維持制度の対象で、定価はどこでも同じだからです。差がつくのはポイント還元、送料、到着日、そして在庫の有無だけです。実際に安く買えるのは古書と、値引きのある電子書籍のほうです。
まず日本の古本屋で書名を引き、全国の古書店の在庫を一度に確かめます。次に図書館の蔵書検索を当たり、近所になければ相互貸借で取り寄せてもらいます。著作権が消滅している作品なら青空文庫で読めることもありますし、国立国会図書館デジタルコレクションで画面上に読める場合もあります。買う前に、読める道を探すほうが早いことは多いです。
在庫のある新刊ならネットのほうが早いことが多く、取次の在庫が切れている本や小さな版元の本は書店に頼んだほうが確実です。書店は版元へ直接発注してくれる場合があり、ネット書店で入荷未定と表示されている本が二週間ほどで届くことがあります。急がない一冊なら、近所の店に頼んでみる価値があります。
多くの電子書店で購入しているのは、その書店の仕組みの上で読む権利です。書店が閉じれば読めなくなる可能性は残ります。読み捨てる本、検索したい本、置き場所のない本には向きますが、十年後も同じ状態で持っていたい本は紙のほうが確実です。両方で買う人がいるのは、この二つが別の道具だからです。
ネット書店の店頭受け取りが使える地域なら、まずそれを確かめてください。並行して、図書館のリクエスト制度を使うと、読みたい本が公共の棚に増えていきます。それでも足りない分は、年に何度か大型書店のある街へ出て、まとめて棚を見る日をつくるのが現実的です。棚を眺める時間そのものが、検索では代わりにならない情報源です。